欧州連合における医療機器の規制の背景
2021年、4年間の移行期間を経てEU医療機器規則(EU MDR 2017/745)が適用開始となり、従来の医療機器指令(MDD)および能動植込み型医療機器指令(AIMDD)に置き換わりました。現在、EU市場に初めて投入される(上市される)機器は、すべてのEU加盟国で医療機器を流通させるために必須となるCEマーキングを取得するにあたり、MDRの要件に準拠しなければなりません(ただし、一部の加盟国では独自の追加要件が定められている場合があります)。MDDまたはAIMDDに基づくCEマーキング証明書を保有するレガシーデバイス(クラスI自己認証デバイスを除く)については、MDR第120条を改正した規則 (EU) 2023/607に沿った猶予要件への準拠を維持することを条件に、最終的な移行期限まで販売を継続することができます。
EU MDRに基づくCEマーキング取得の規制ロードマップ
MDRにおけるクラス分類は、対象機器の適合性評価手順を決定する重要な要素です。医療機器は、そのリスクレベル、使用目的、およびMDRの附属書VIIIに規定されている分類規則に基づいて、クラスI、IIa、IIb、またはIIIに分類されます。MDRのもとでは、すべてのクラスIIa、IIb、およびIIIの機器において、CEマーキングを取得するために、指定された認証機関(Notified Body: NB)による適合性評価を受ける必要があります。また、特定のクラスI機器であっても、滅菌状態(クラスIs)、測定機能(クラスIm)、または再利用可能な外科用器具(クラスIr)に該当する場合は、認証機関(NB)の関与が必要となります。
EU MDRにおける医療機器の適合性評価手順
クラス分類にかかわらず、すべての医療機器は、EU MDRのもとでCEマーキングを取得し、製品ライフサイクル全体を通じて規制への準拠を維持するために、以下の主要な要件を満たす必要があります。
MDRの附属書Iに規定されている「一般安全および性能要件(GSPR)」への適合。
MDRの要件への適合性を示すため、附属書IIおよびIIIに従った「技術文書(Technical Documentation)」の作成および維持。
MDRの要件に適合し、一般的にISO 13485:2016に準拠する「品質マネジメントシステム(QMS)」の構築および運用。
サプライチェーン全体におけるトレーサビリティを確保するための、「固有デバイス識別子(UDI)」の割り当て。
EU域外の製造業者の場合、規制当局に対する窓口となるEU域内の「法定代理人(欧州代理人、シンボル:EU REP)」の任命。
クラスI医療機器(滅菌、測定機能、または再利用可能な外科用器具を除く)の製造業者は、認証機関(NB)の関与なしに適合自己宣言を行い、CEマークを貼付することができます。一方で、クラスIs(滅菌)、クラスIm(測定機能)、クラスIr(再利用可能な外科用器具)、およびクラスIIa、IIb、IIIに分類されるすべての機器には、認証機関による監査(審査)が必要となります。
認証機関(NB)による適合性評価の範囲と深度は、リスク分類が高くなるにつれて厳格化します。例えば、市販前の臨床試験が義務付けられている高リスク機器の製造業者に対しては、NBが臨床データを徹底的に精査し、MDR第62条から第82条に定める臨床要件を確実に満たして試験が実施されたかどうかを検証します。その際、リスク管理ファイル、QMS文書、サプライチェーン情報、および臨床評価報告書(CER)が詳細に審査されます。一方で、測定機能付きクラスI機器(クラスIm)などの低リスク機器におけるNBの監査は、測定機能に関連する適合性評価手順のみに限定されます。
適合性評価が完了すると、認証機関(NB)よりCEマーキング証明書(EC証明書)が発行されます。これにより、製造業者は製品にCEマークを貼付し、適合宣言書(DoC:Declaration of Conformity)に署名した上で、EUDAMEDへのデバイス登録および/または関連する管轄官庁への登録手続きを行うことができるようになります。
